『榎本武揚』(えのもとたけあき)は、安部公房の長編小説。前衛的な作風の多い安部文学の中では異色の歴史小説である。北海道厚岸に住む元憲兵の旅館の主人から、ある古文書を送られた「私」が、徳川幕府海軍副総裁・榎本武揚の実像を追っていく物語。榎本暗殺を目論んだ元新撰組隊士の告発文を頼りに、榎本の「裏切り」と「変節」の過程の真相を、五稜郭の戦いの時期の動きから追求しつつ、世間が「勤皇」か「佐幕」かと騒ぐ中、そのどちらでもない立場があることを信じた榎本の姿を独自の視点で描いている。続編的な戯曲版『榎本武揚』も1967年(昭和42年)に創作され、同年9月20日に劇団雲に......
『榎本武揚』(えのもとたけあき)は、安部公房の長編小説。前衛的な作風の多い安部文学の中では異色の歴史小説である。北海道厚岸に住む元憲兵の旅館の主人から、ある古文書を送られた「私」が、徳川幕府海軍副総裁・榎本武揚の実像を追っていく物語。榎本暗殺を目論んだ元新撰組隊士の告発文を頼りに、榎本の「裏切り」と「変節」の過程の真相を、五稜郭の戦いの時期の動きから追求しつつ、世間が「勤皇」か「......