『吉野葛』(よしのくず)は、谷崎潤一郎の中編小説。1930年1、2月『中央公論』に分載。当時、阪神間岡本に住んでいた谷崎は、説経節「葛の葉」に取材し、吉野をたびたび訪れ、吉野を舞台とした「葛の葉」を執筆していたが、これを破棄して、改めて友人・妹尾健太郎をモデルとする「津村」の母恋いを主題として、この「吉野葛」を書いた。随筆風に書かれており、曲亭馬琴の『開巻驚奇侠客伝』の、後南朝自天王の物語を書いてみたいと思っていたという書き出しから、とりとめなく筆は進み、発表当初は失敗作、あるいはただの随筆と見る意見が強かったが、水上滝太郎は高い評価を与えた。はじめは中央......
『吉野葛』(よしのくず)は、谷崎潤一郎の中編小説。1930年1、2月『中央公論』に分載。当時、阪神間岡本に住んでいた谷崎は、説経節「葛の葉」に取材し、吉野をたびたび訪れ、吉野を舞台とした「葛の葉」を執筆していたが、これを破棄して、改めて友人・妹尾健太郎をモデルとする「津村」の母恋いを主題として、この「吉野葛」を書いた。随筆風に書かれており、曲亭馬琴の『開巻驚奇侠客伝』の、後南朝自......